海の男

私の住んでいた山と湖に挟まれたニュータウン。
京阪電車の線路が町まで延びるという計画もいつの間にかなくなっていた。
薔薇と名付けられたその街に、毎週その男はあらわれた。
魚屋のおっちゃん。
福井だか三重だか、どこかの港町からトラックに潮の香りだけつめこんでやってきた。
パンチパーマの終着点、それが家の前だった。
家のガレージからホースを伸ばし、いつもトラックを洗っていく。
そしてピカピカの小さなトラックでまたどこかの港町に帰っていく。
きっと帰りは鳥羽一郎の歌でも口ずさんでいるに違いない。

小さい頃、おっちゃんが来ると人見知りの私は
いつもおばーちゃんと一緒に魚を買いにいった。
売り切れている日も多かったが、それでもトラックに寄って行った。
なぜならパンチパーマのおっちゃんはいつもガムをくれるからだ。
ハッカ味のチューインガムがやけに大人っぽく感じた。

そしてパンチパーマは男のロマンなんだなと確信した。
鳥羽一郎は北島ファミリーではなく鳥羽一郎という個として存在しているのだ。
演歌の人は出身地を名前につけたがるのが常。
私が育った町は大津市と合併してしまった。
今日から私は「元志賀町文武之介」に改名します!

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すてきやね。

  • Kei
  • 2007年10月15日 00:23

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